20歳でパンの世界に入り、予約専門の食パン店で修業。スイス・フランスで修業を重ね、2014年に「のり蔵」をオープン。小麦を作る人たちの気持ちを大切にし、その想いをパンの形にしている。古い時代の家具や湿気に囲まれた店内で、こだわったパンづくりをしている。
小さいころからおばあちゃん子だったという安部シェフ。実家には桐ダンスなどがあり、“和”の空気が漂う空気の中で育ったと言います。そのようなバックグラウンドから、自身のお店を立ち上げる際コンセプトにしようと思ったのは “和モダン”のイメージ。安部シェフは、昔ながらのパンや古きよき時代のテイストを大事にしながらも、今にどう表すかを追究しています。
『ぼくのお店に並ぶパンは、すべて北海道産和麦を使っています。他地域の和麦や外国産コムギのおいしさもあると思いますが、“自分にとってのおいしい”を追究したら北海道産和麦にたどり着きましたね。北海道産和麦を使い始めたのは25年ぐらい前からでしょうか。最近は和麦の質も変わってきていたり品種も増えたりして、一層つくりやすくなってきました』
『まず「ルヴァン」のレッスンからです。使う和麦は「キタノカオリ」という秋播きの品種。食パンにしてもおいしいですしフランスパンにもしてもおいしい和麦です。焼くとキレイな黄金色の内層にできあがる、味わい深い粉なんですね。この「キタノカオリ」の粉に、「春よ恋」や「キタホナミ」を配合したいいとこどりのブレンド粉を少し混ぜます。このブレンド粉は「灰分」が少し高めで、焼き上げ時に風味が増すんです。生地の状態は普通のパンに比べて少しべたつく膨らみは抑えめ、フルーツのザクザク感を楽しめるように仕上げます。』
『次に「シナモンロール」ですが、こちらは北海道の中でも美瑛産のコムギを使っています。生産農家さんに会いにコムギ畑へも行くんですが、美瑛の景色は本当に美しい。冬のことを考えると住むのは諦める気持ちになりますが(笑)、すばらしいところです。そんな景色への思いもパンを通じて伝えられたらと。「のり蔵」のパンは“やさしい味”を大事に考えていて、原材料の生産者さんたちの気持ちを大切にしたい思いを込めています。だから、そのおいしさを存分に引き出せるようにできるだけイースト量を減らしてつくります。時間はかかりますが、せっかく北海道和麦を使うのだからそのおいしさをどこまでパンとして伝えられるか、それがいちばん大事なこと。このシナモンロールも、できるだけ必要のないものを省いた、昔からある材料でつくりあげるレシピに仕上げています。さまざまな材料にそれぞれ生産者がいて、それぞれに思いがある。その思いひとつひとつをつなげて、最後にパンという“おいしさ”に焼き上げてお客さまにお届けすること。そういう思いで毎日パンを焼いています。』
『聖樹のパン』原作者・山花典之さんと作画担当・たかはし慶行さんツーショットをパチリ。
和麦を使ったパンづくりに込められた安部シェフの思いを知って感動しました。
和麦パンづくりの背景を知ると、パンを味わうときに和麦の産地が見えてくるような気がします。
目には見えてこない熱い思いがパンには込められているんだなと感じました!