町のパン屋さんの新しい兆し。
住宅地の中に小さなパン屋さんがあるというウワサを聞きました。
今までなかったような個性的なパン屋さんなのだそうです。町の中での「パン屋さんのあり方」が変わってきているのかも?
今回の「小麦な生活」は待ちに出かけて行き、「町の小さなパン屋さんに生まれている新しい兆し」を探ってみました。
cimaiシマイ
埼玉県幸手市
「姉妹でやっているお洒落なパン屋さんがあるんですよ。」というウワサを聞き、埼玉県幸手市を訪ねてみた。 表通りから外れた細い道沿いに、四角くて、白い漆喰壁の小さいお店がぽつりとあった。 周りは住宅地で緑が多く、畑や田んぼなどが散在している。 茶色い重厚な木のドアを開けて、お客さんが次々に訪れる。 あるお客さんはパンを入れる編みかごを持って、あるお客さんは友人を訪ねる時のような面持ちで。 店の外の白壁にcimaiとネームが書いてあるだけでパン屋さんであることは外からはわからないが、 中に入った途端、漆喰から発散する少し湿気たような独特の空気感、高い天井、四角や直線でできた空間に、ドキッとする。 古家具の机の上にパンがアートのオブジェのようにきれいに並べられ、カンパーニュはクープ(切り込み)の茶色と白い粉の対比が美しく、どっしりとして荘厳でさえある。 cimaiのパンは季節の果物や野菜、ナッツや黒砂糖、チーズなどを練り込んだ素材の自然な味わいを活かしたシンプルなハード系のパンで、姉の大久保真紀子さんが天然酵母、妹の三浦有紀子さんがイーストを使ってパンを焼いている。小麦粉は国産小麦が中心でライ麦粉と全粒粉は栃木の農家のもの。お客さんにはきちんと商品説明をし、保存方法、食べ方等を笑顔でアドバイスしている。「『お客さんがドアを開けてお店に入ってパンを選んで召し上がるまで』を提供したいんです」と妹の有紀子さんは言う。お客さんが持参したエコバッグやかごには薄紙に包んだパンをそのまま入れる。ポリシーが非常に明確だ。
10年ほど前に二人で大好きなカフェ巡りをしていて、カフェの草分けのお店1988 CAFE SHOZOに出会った。 その凛とした空気感や洗練された店づくりに衝撃を受け、「こんな空間がつくれたらいいね」と話をしながら帰ってきたそうだ。 その後、一緒に上京して真紀子さんは天然酵母のお店「ルヴァン」で、有紀子さんはケーキとパンのお店でパンづくりの経験を積んだ。 そして2005年、 二人でユニットを組み、恵比寿にある布と器のお店でパンを販売。これがcimaiのスタートだった。 出演するイベントではパンがいつも完売、人気が出てくるにつれて起業を考えるようになった。 「パンを通してモノづくりをする工房と、表現・発信のできる店舗が欲しくなったんです」。
イメージ通りの「四角い建物や雑居ビルのような」物件を幸手市で見つけ、自分たちで壁に漆喰を塗り、バーナーで床を焼き、2008年にお店をスタート。
今年でお店を始めて5年。「みんなが力を合わせたから、ここまでやってこれた」と有紀子さんは言う。 ユニット活動や仕事の中で出会った友人も強力なサポーターだ。気が合う仲間が自ずと集まってくる。「同種の人間は同じ匂いがするからわかるんです」 有紀子さんはお店のスタッフには夢を持って楽しく働いてほしいという。 しかし、小学校5年生のお母さんで子育てをしながらお店をやっている彼女自身は全力で働いている。 パンづくり以外の仕事も増えている中、工房の中の仕事をまかせるスタッフを入れようか迷っており、お店が次のステップに移る転換期がきているのではないかという。
cimaiでは、店舗の二階にある四角いスペースでいろいろなイベントを開いている。 不要になったモノを次の人につなぐ「つなぐもの市」「うめぼしをつくる会」「くつみがききの会」「朝ヨガ」など。9月にも音楽会を実施する予定だ。
「cimaiをパンを売るだけでなく、人が集まり、出会う空間にしていきたい」と、最後に有紀子さんは夢を語ってくれた。
住宅地の中の小さなパン屋さん
最近、住宅地の中に地元密着型の個性ある小さなパン屋さんが増えているようだ。 自宅を改造したり、外装を自分たちでやるなど手づくり感のある小さな店舗である。 女性がパンづくりをし、子育てをしながら自宅、または自宅のそばでお店をやっているというお店も多いようだ。 口コミで近所に評判が広がり、開店前から行列ができる。 どこにあるかよくわからない、少量生産ですぐ売り切れてしまう、営業日が週2、3日、 不定期等でぶらりと行っても店が開いてない、などの理由から「幻のパン屋さん」などとも呼ばれたりする。
ユニット
「創作・表現活動」のために結成されたアーティスト集団を意味するコトバ。 イベントなどで自作のパンを販売するグループも「食ユニット」「職人ユニット」などと呼ばれる。店舗なしのテント販売からパン屋さんをスタートするユニットもある。
カフェ(パンカフェ/雑貨カフェ)
1988 CAFE SHOZO(カフェショウゾウ)とは、栃木県黒磯のアパートの2階に1988年開業した地元密着型カフェの草分けので、 家具・調度品がアンティークで、独特な空間作りのお洒落でかっこいいお店。
表現メディアとしてのパン
欧州にも「飾りパン」という伝統的なパンのジャンルがあるが、粘土のように造形ができ、 発酵・焼き上げの方法によっていろいろな表現ができるパンは創造性の高いメディア、アート作品である。 成形したり焼いている過程もパフォーマンス・アートである。
cimaiシマイ |
埼玉県幸手市幸手2058-1-2 0480-44-2576 www.cimai.info |
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