コムギが長寿を調査する!プロジェクト

竹下晃朗さん「ロシナンテ工房」

竹下晃朗さん「ロシナンテ工房」 パン屋さんからみた京都パン食人

その工房では、全てが、その手からつくりあげられる

『その石臼も、石窯も、すべて私がつくりました。元々はパン用オーブンのエンジニアの仕事をしていたもので。必要な分だけこの石臼で小麦を挽いて、1週間に1度ここでパンを焼くんです。手挽きの小麦だとおいしさがぜんぜん違います。蕎麦粉もそうでしょう?小麦も同じです。』

工房に一歩足を踏み入れると、挽きたてのフレッシュな小麦の香りに包まれます。御年95歳、竹下晃朗さんは現役のパン職人。エンジニアとしてパン用オーブンの設計や調整を手掛けるうちにパンづくりの道へ入った、異色の経歴の持ち主です。「ロシナンテ」と名づけられたレンガ窯は自らの設計によるもので、竹下さんはパン職人であると同時に石窯研究家としても知られています。手がけた石窯は、北は北海道、南は沖縄と、日本全国で今日もパンを焼き上げています。

竹下さんお手製の電動石臼

「ロシナンテ」と名付けられた
竹下さん製作による石窯

毎月、京都にあるオーガニックカフェでワークショップを開いている竹下さん。京都の人々に、どのようなパンづくりを伝えているのでしょうか。

『私のつくるパンはとてもシンプルです。信頼のおける岩手と北海道の生産者から取り寄せた中力の玄小麦をまるごと挽く。100%全粒粉の風味を活かすために、有機ドライイーストと塩、砂糖をちょっとだけ、そこに水を入れる。何十年も前からあるフランスパン伝統の製法です。小麦の味わいを活かすことが、すべて。』

芳醇な香り、口にひろがる豊かなコク、ハード系パンと思えないほどにしっとりした食感。また、パンだけで食べたときと、チーズを乗せた時とで驚くほど変わる味わい。竹下さんのパンは今までに食べたことがないような味わいでした。

『私はシドニーで生まれ、パンで育ちました。それは黒いパンでした。昔のパンは今のように小麦が精製されておらず、黒かったんですね。おいしかった。その味が記憶に残っていて、毎日の食卓に食べるパンが追い求めている理想像です。実際、朝・昼・晩3食ともパンですね。お浸し、きんぴら、煮物、なんにでも合うと思います。』 確かに、パンそのままで食べたときとチーズを乗せた時にパン自体の味わいが変って感じられたのと同じように、あわせる惣菜の変化でおいしさが変ってきそうです。全粒粉だからその味わいが出るのでしょうか。全粒粉は健康にもよいとされますが、竹下さんご自身の健康ご長寿にも関係があるのでしょうか?

『おいしさと健康、そのどちらもですね。低速の石臼で挽いた全粒粉は高速の製粉機で挽いたものとは異なり、パンの風味が濃厚で食べやすく、 小麦の表皮に近い部分も含まれるため栄養分も生きている。私がつくるパンをお客様にお渡しする際には、小麦の味わいを感じてほしいと思います。同時に、健康にいいものを食べてほしいと願ってつくっています。』

「竹下晃朗とロシナンテ窯」
www.roshinante.org/

竹下晃朗
(たけしたあきろう)さん

1921年オーストラリア、シドニー生まれ。自由学園男子部の一回生卒。自由学園の那須農場を任され、麦、トウモロコシ、野菜を育て、実験と試行錯誤を繰り返しながら小麦を挽いてオーブンを自作しパンを焼いた。その後、エンジニアリングの仕事に着手する。パン用オーブンの設計、調整の仕事をしていくうちに「自分の食べたい、自分の焼きたいパン」を模索し、1991年娘婿と石窯(ロシナンテ)を築き石窯パンの味を再現する。 『私のパンへの思いは、オーストラリアのシドニーで生まれたこと。もの心ついた1921年、大正の末、毎朝配達される温かいカントリーブレッドのふくいくたるパンが忘れられないことが原点であると思う。』