井澤製粉株式会社
岩﨑克紀さん
和食文化のイメージが強い京都ですが、意外なことにパンの年間購入量は全国1位(※1総務省「家計調査」平成25年から27年の平均より)。昔からパン屋さんが多く、コムギケーション俱楽部の【コムギが長寿を調査する!プロジェクト】では京都を対象とした調査も行っています。そうした背景をもつ京都の和麦事情、どうなっているのでしょう?京都和麦を挽く製粉会社「井澤製粉」岩﨑さんにお話をお聴きしました。
『パンの購入量が全国でもトップの京都ですが、和麦の生産量は全国の中でも多い方ではありません。平成16年までは400~500トンの収穫量があったのですが、その年に大型の台風が京都府北部の和麦産地を直撃して農地が荒れてしまい、それから年間約200トン弱に減退してしまったんです。
京都和麦は主に学校給食のパンとして届けられています。京都の子どもたちにこの地域で育った和麦でつくったパンを食べてほしいという現場の声も多く、私たち井澤製粉は京都和麦を挽く製粉会社の使命として、京都府やJAに京都和麦の収量増産を強く希望する声を届けておりました。』
食パン、コッペパン、ミルクパンなど、京都和麦はさまざまな形状の学校給食パンに焼き上げられています。
『長年にわたってお願いしていた収量増産の声が届き、このたびついに京都和麦の現場が大きく動くことになりました。平成30年度産から和麦の品種が全面切り替えになります。これまで京都では今回レッスンでお使いいただく強力和麦品種「ニシノカオリ」と中力和麦品種「農林61号」でしたが、山口県で開発された強力和麦品種「せときらら」100%へ。育成する品種を変えることは、農家の方にとってはとても決断のいることです。近年の和麦の動きの中で、パン屋さんなどの加工製造業側だけでなくお客さまからの声も聞かれるほど、全国各地で和麦人気が話題になってきている背景が今回の全面切り替えへの決断を後押ししてくれたのではないかと思っています。』
『今回全面切り替え導入をお願いした和麦品種「せときらら」は、これまでに課題だった収量アップの問題に応えてくれる反収のよい品種です。同じ耕地面積でも収量が増えるということは、生産農家の方にとっても収益が増えることになります。加工業に携わる方々だけでなく生産農家の方々も含めて、京都和麦にかかわる方のよりよい環境改善を考えることが私たち中間業である製粉会社の使命だと感じています。自分たちが育てた和麦が実際はどのように食べられているか知らない、という農家の方々を懇親会にお招きして京都和麦で焼き上げたパンを食べてもらう、といった取り組みも実施しています。「自分たちがつくった和麦がこういうふうに食べられているのか!」と、にこやかな表情になる農家さんの姿はとても印象的。これからも京都和麦通じてこの地域の方々が笑顔にするような環境をつくっていきたいと思っています。』
大きな転換期を迎える京都の和麦シーン、新たな可能性が広がっていく気配です。
◎井澤製粉株式会社ホームページ
http://www.e-flour.co.jp/index.html
和麦名 | ニシノカオリ | ||
---|---|---|---|
成 分 | タンパク:10.2% 灰 分 :0.5% | ||
粉分類 | 強力粉 | ||
特徴・向く料理 |
・菓子パン・総菜パンや、フランスパンなどハード系のパンに向いています。 ・中華麺、ラーメンにもご使用いただけます。 |
京都和麦アンバサダー
登坂 利枝先生
パン購入量ナンバーワンを誇る京都にちなんで、京都和麦はパンのレッスンです。しかも“おばんざい”とあわせてもおいしい「コッペパン」がテーマ。和麦アンバサダーの登坂利枝先生は、「なぜその作業が必要なのか、なぜその順番なのか」パンづくりの工程をわかりやすく紐ときながらレッスンを進めていきます。
『今日は京都和麦を使ってコッペパンをつくっていきますよ。京都の和麦って珍しいですよね、触れるのが初めての方もいるんじゃないでしょうか。今回は北海道産和麦「春よ恋」をブレンドして仕上げます。それと、保湿性を保つためにはちみつを。そして、ここがミソ!というわけで味噌を入れます。味噌は発酵を促してくれるようで、焼き上がりがふわっとよりよく膨らんでくれるんです。』生徒さんから『京都の和のイメージと合いますね~』との声。京都和麦「ニシノカオリ」も、おかきやおせんべいなど和の風味に近い香り感じられるとの特徴をもつ、和のイメージの品種です。
『生地づくりのステップに関する考え方ですが、まずは最初に水と粉をくっつける、その次にこねてグルテンの膜をつくってあげる、その後に油脂=バターを入れてさらにしっかりしたグルテンをつくる、というイメージです。こねはじめは力をかけるより押しながら転がしていきます。生地を張らせるような感じで。右手でぐっと押して、左手で生地を追っていく。この繰り返しで溶かしバターだと焼き上がりの感じが変わってきてしまうので、バターを生地に練りこむ際は手の温度で溶かしながら生地を引きちぎるようにこねていきます。こねているうちになじみのよいツルンとした生地になっていきます。その感じになったら油脂が入り込んでいった状態です。』 『こねすぎたらダメ、ということはあるんですか?』『そうですねぇ、あまりこねすぎると焼き上がりが変わってきてしまうかな。トータルで15分ぐらいこねて、生地の状態を見て判断してみてくださいね。』
登坂先生のアドバイスに従い、生徒のみなさんで生地をこねあげていきます。
『コッペパンていろんな形があるから、成形に関しては一概にこれっていう形はないんです。生地を広げて三重に折りたたんだら分割、生地の折り目は餃子みたいにしっかりつまんで閉じていく。閉じたら少し形を整えてあげる。まあるく仕上げるパンの場合、表面の生地をプルンと滑らかに張らせてあげてください。そうするとそこにガスが入って来てくれるから、ぷわっと膨らみます。』
『いい匂いがしてきましたね~!』『はい、焼きあがりましたよ~。今日はゆずシロップで味付けしたポークと野菜、お手製ミルククリームやピーナツクリームなど、いろいろ用意してみました。お好みでトッピングしてみましょう!』『好きに選べるって楽しいね』『それぞれセンスが出るよね』『お店で食べるコッペパンよりパン自体の香りが濃くておいしい!』『トースターで少し焼くと香ばしさが増してもっとおいしく感じるわ♪』ふだん慣れ親しんでいるコッペパンも、パンから焼いて具材アレンジも自分流にするととても新鮮。みなさん思い思いの味わいを楽しむことができたようです。
京都和麦を食べた事が無かったのですが、甘味もあってお食事パンにもデザートパンにも合うおいしいパンが出来ました。スーパーで買えることがきたらぜひ使ってみたいです。
パンづくり自体初めてでしたが、小麦についてこんなに深く考えた事が無かったので、和麦を知れただけでも勉強になりました。貴重な体験でした。
ニシノカオリという粉を初めて知りました。しっかりとしたかみごごちで香りもよく、和風な食材を挟んで食べたらとても合っていてどんどん食べられるパンでした。
とてもおいしいパンが出来上がり、とっても幸せな時間でした。パンの生地がこねている間にどんどん変化している感じがおもしろく、不思議とかわいく思えました。京都和麦の詳しい話を聞けたのも勉強になりました。
普段から和麦を使っていますが「ニシノカオリ」という名前を聞いたのは初めてでした。もっちりした食感で食べ応えがありおいししかったです。
ニシノカオリで作るコッペパン
◦ ニシノカオリ・・・180g
◦ 春よ恋・・・・・・20g
◦ 砂糖・・・・・・15g
◦ はちみつ・・・・・7g
◦ みそ・・・・・10g
◦ 塩・・・・・・2g
◦ 牛乳・・・・・100g
◦ 水・・・・・・40g
◦ 無塩バター・・15g
◦ インスタントドライイースト 小さじ1/2
◦ 溶き卵・・・・・適量
調理時間90分/00個分
ボウルに牛乳、水、砂糖、はちみつ、みそ、ドライイーストを入れて混ぜ 粉類、塩を入れ、ゴムベラなどでひとまとまりになるまで混ぜる
台の上にだして全体的に押し広げまとめる(2回) しばらくこねてバターを入れこする様にすり混ぜる 更にしっかりと捏ねる
丸めてボウルにもどし1次発酵35℃で90分くらい 生地が2倍になるのが目安
5等分に分割し丸めたら固く絞った布をかけ15分位ベンチタイムをとる
麺棒などで楕円形に広げ上から指の平を使い丸める
とじ目を閉じ、中心から外に向かって転がしながら15㎝くらいにのばす
とじ目を下にして天板にのせ35℃で40分位最終発酵させ、溶き卵を表面にはけで塗る
天板にのせ190℃に予熱したオーブンに入れて11分〜13分焼く
レシピポイント
・味噌を入れる事で発酵力が強まりよりふっくらと仕上がります。
・塩分濃度を調べてその分塩を調節して下さい。