小麦な生活

ふるさとの「かてめん」マップ
〜 江戸時代以前から家庭で作り続けられているめん料理 〜

※「かてめん」は「主食としてのめん料理」と定義したカテゴリーの名称。ここでは小麦生地の形を多様に変化(へんげ)させてゆでる、多彩な小麦料理群のことを意味している。
※江戸時代以前から家庭で作られていたと思われる「かてめん」を地図上にプロットした。明治時代以降に考案されたもの、飲食店でしか食べられていないもの、外国から導入されたもの、おやきなどの焼き物、デザート類は割愛した。

●昔(大正14年)の都道府県別小麦生産量 うどん・そうめん圏 きしめん・うどん圏 ほうとう・つけうどん圏 ひっつみ・はっと圏 だご・うどん・そうめん圏へ

A ひっつみ・はっと圏
東北・太平洋側
  • 専用の南部せんべい(飢饉に備えるための保存食として八戸藩が推奨)を、季節の野菜とともに醤油味で煮こんだ汁物。

  • 小麦粉をこねて薄く伸ばしたものを手でちぎり(ひっつみはちぎるの意)、季節の野菜とともにだしで煮込む。

  • 旧南部藩領に古くから存在する伝統的な家庭料理。遠野のひっつみは鶏でだしをとるさっぱりとした味。

  • 久慈市に伝わるハレの日の汁物。「まめまめしく健康に」という願いをこめて生地を豆のようにまるめクルミや黒砂糖をつめる。

  • 「ひぼが(ひもかわの意)」と呼ばれる平打ちめんをゆでて熱いかけ汁を注ぎ、油揚げと長ネギをのせたやさしい料理。

  • 岩手の「ひっつみ」が食べられている地域より南では、生地をちぎらず指でのばす「はっと」が伝統食としてひきつがれている。

  • 生地を指で薄くのばし醤油仕たての汁でゆであげる。登米市ではあずき、ずんだ、ジュウネンなどにからめたり、油麩と煮る。

  • 野菜や、豆腐、油揚げ、豆麩などをシイタケのもどし汁で煮込み、あんでとろみをつけた汁物。うーめん(温麺)を入れる。

B ほうとう・つけうどん圏
北関東・甲信
  • 煮干しのだし汁に里芋、長ねぎ、人参、油揚げなどを入れて、みそ(醤油)で味つけをし、太めに切っためんを入れて煮込む。

  • 水澤寺付近に伝わる手打ちうどん。やや太めでコシがあり、透き通る感じの白いめんである。冷たいざるうどんで食べることが多い。

  • みそをベースに胡麻、キュウリ、青じそ、茗荷等の夏野菜をすり鉢ですり合わせ、つけ汁でうどんやそうめんを食べる夏の料理。

  • (炒めた)ねぎなどの具の入った鰹節・醤油味のだしの「つけ汁」「かけ」で食べる。写真は荒川にちなんだ『こうのす川幅うどん』。

  • 生地を平たくのばして切り、打ち粉がついたまま汁に放り込む。群馬県の東毛や埼玉県では、ほうとうは「にぼうとう」と呼ばれる。

  • 小麦粉を練って一口大にちぎり、野菜と煮込んだ郷土料理。以前はよく夕食として食べられていた。「とっちゃなげ」とも呼ばれる。

  • 固くて腰のあるうどん。鰹だしにシイタケ、ゴマなどを混ぜた温かい汁に、ねぎや油揚げなどの薬味を混ぜ、麺にからませて食べる。

  • 「ねずみ大根」をすりおろし、布巾でしぼった汁に信州みそを溶かしてつゆを作り、うどんをつけて食べる。しぼり汁を使うところがユニーク。

  • 佐野市のお正月料理。耳の形をしたユニークなうどん。耳を食べてしまえば神様の耳に悪口が入らず、悪いことが起きないという。

  • 日常はほうとう、ハレの日には野菜の少ないうどんが食べられていた。断面が四角く、あごが疲れるほど固くかみごたえがある。

  • 煮干しでだしをとり、野菜を煮てみそで味をつけて煮込む。山梨県のほうとうにはカボチャやジャガイモが用いられるのが特徴。

  • みそ(または醤油、塩)味の汁の中に旬の野菜と小麦粉を水で溶いた団子を入れて煮る。具や味つけが多彩なおふくろの味。

C きしめん・うどん圏
三河・伊勢周辺
  • ゆでた薄くて平たい麺に熱いつゆをかけ、油揚げや鶏肉などの具を入れ、ネギ、鰹節をたっぷりのせる。

  • うどんを生のまま鰹節だし、みそ(八丁みそ)仕立ての濃い汁で煮込む。煮込む時間が短く、独特の歯ごたえがある。

  • たまり醤油に鰹節やいりこ、昆布等のだしを効かせた黒く濃厚なタレを、ゆっくりと軟らかく煮た極太のめんにからめて食べる。

d うどん・そうめん圏
瀬戸内・海浜部
  • 大根やにんじん、里芋などの根菜類、油揚げを一度に煮込んで、ゆでたコシの強いめんの上からかけて食べる寒い季節の料理。

  • たくさんの野菜を入れ、手打ちうどんを入れてみそ味で煮込む。農村の日常食として、どこの家でもよく作られていた。

  • 打ち込み汁のどじょう版。昔はいくらでも入手できたどじょうは、今では高級魚である。夏場から秋口にかけてが旬の料理。

  • 釜揚げした手打ちうどんをお湯ごとたらいに入れ、醤油で味つけしたいりこ風味のだしにつけて食べる。薬味はねぎとしょうが。

  • そうめんをつくる際にできるめんの端の部分「ふし」を活用した家庭料理。鍋料理に入れたり、お吸い物や味噌汁の具にする。

  • 瀬戸内や石川・富山・静岡などの沿岸部にみられる料理。なすを炒め醤油と砂糖で味つけし、そうめんと煮る。唐辛子を効かせる。

  • 塩田での重労働を終えた人々向けに提供されたというつるつるとした細いめん。だしは煮干しなど。写真は『鳴ちゅるうどん』。

  • 幅が広く、長さが1 メートル以上あり「一筋一椀」「祝麺」とも呼ばれる。コシが弱く、柔らか。江戸時代、円通寺の修行僧が食べていた。

E だご・うどん・そうめん圏
北九州
  • ふんわりやわらかなめんに、いりこなどのだし、薄い醤油味のつゆをかけて食べる。冷やうどんは醤油などにつけて食べる。

  • みそ(醤油)仕立ての野菜入りの汁に、指で伸ばしたきしめんのような平たいめんや、薄くおしつぶした丸いめんを入れて煮る。

  • ごまだしを湯に溶いてうどんを入れ食べる。ごまだしは焼いたエソ類などの魚の身、胡麻、醤油等を混ぜ、すり潰してつくる。

  • 「めでたい」結婚式の料理。鯛を塩焼きして煮る。手打ちうどんに煮汁の味をしみこませる。波にみたててうどんを大皿に盛り、その上に鯛を飾る。

  • 天草ではそうめんを焼いた鯛の身や薬味といっしょに温かいつゆにつけて食べる。鯛の周りに波のような巻いたそうめんを並べる。

  • ごぼう、にんじん、サトイモなどの野菜を入れて煮込んで味噌で味つけし、手でちぎった、あるいは包丁で方形に切っただごを入れる。

  • ゆでたそうめんに油をからめ野菜をのせる。流通が悪く乾物に頼らざるを得なかった離島で生まれた奄美群島の郷土料理。


写真提供:
1, 2 青森県農林水産部総合販売戦略課/3, 5, 6 財団法人岩手県観光協会/7 宮城県観光課/10 群馬県/11, 12, 13, 14 埼玉県産業労働部観光課/15「武蔵野うどん / yousukezan」
http://www.flickr.com/photos/yousukezan/3905280033/16 坂城町役場企画政策課まちづくり推進室/ 17 足利佐野めんめん街道推進協議会/18, 19 鹿嶌信哉/20 大月市/21, 22 社団法人愛知県観光協会/ 23 社団法人 三重県観光連盟/24, 25, 26, 27, 28, 29 香川県農政水産部農業経営課/30 財団法人徳島県観光協会/ 31 社団法人岡山県観光連盟/32「博多うどん小麦屋 どんたくうどん / rhosoi 」
http://www.flickr.com/photos/rhosoi/1474712594//33, 34, 35 大分県/ 36, 37 熊本県
*ご協力どうもありがとうございました。