和麦ストーリー 
山口和麦「せときらら」篇

山口大学農学部教授
高橋 肇(ただし)さん

山口県の学校給食パンは、県産和麦90%+県産米粉10%と、県産原料100%で焼き上げられています。県産原料100%の学校給食パンは北海道に次いで2番目の快挙で、さらに生産量全国17位(平成30年産)の山口県としては、とても大きな地産地消の取り組みと言えるのではないでしょうか。そうした山口和麦事情のお話を、“地域活性化伝導”をテーマに山口和麦の地元の方々への理解促進活動に取り組んでいる山口大学農学部教授の高橋肇(ただし)さんにお聞きします。

『山口県の学校給食パン県産原料100%の取り組みは、行政からの呼びかけから始まりました。食糧自給率を上げるために土地改良事業などを組み込みながら、二毛作の裏作に和麦を育成していく。私が山口大学に就任した平成7年当時は420ヘクタールしかなかったコムギ畑は、学校給食パン県産原料100%を達成した平成24年には756ヘクタールもの作付面積になりました。行政、生産農家、製粉業界、地域自治体まで、一体となって「県産原料100%の学校給食パン」という目標に向かって動いた山口県の取り組みは、全国的に見ても注目すべき和麦活動なのではないでしょうか。』学校給食パン県産原料100%を達成した翌年から、現在使われている和麦品種「せときらら」が山口県の奨励品種となりました。

『「せときらら」以前は「ニシノカオリ」というパン用品種だったのですが、焼き上がりの膨らみにボリュームが弱かった。また、パンに焼き上げた時に老化が早く、すぐ硬くなってしまうという弱点がありました。そのためパン屋さんは前の日に焼いて詰めることができず、その日の早朝から稼働して大量に焼きあげなければならなかったんです。元々日本のコムギ食はうどんなどが主体で、パン用に向く品種が育てられて来なかった経緯があります。そんな中、DNA鑑定の技術を使ったマーカー選抜による最新の育種開発技術で、「ニシノカオリ」と比べよりパン用に向く和麦品種「せときらら」が農研機構西日本農業研究センターで誕生しました。』山口県の学校給食パンの原料和麦は現在、ふわっと膨らむ県産和麦「せときらら」100%で焼き上げられています。

高橋教授は「せときらら」の地産地消を応援すべく、地域活性化伝道師として活動を行っています。
『和麦は地産地消が非常にしにくい作物なんですよね。お米や野菜などと違い、スーパーなどに商品が並んでも産地表示がされるわけではありません。和麦農家さんも自分自身がつくった和麦でできたパンの味わいを知らないことが多いんですよね。「あ、これは山口県の農家の人がつくってくれてるんだな」そう思って食べることが、地産地消のいちばん大事なところ。つくっている農家さんの顔を思い浮かべることでより和麦の大切さもわかりますし、逆に食べてくれる人のよろこぶ顔を見ることで農家さんも使命感を持ってより品質の高い和麦をつくろうと思う気持ちが芽生える。山口和麦の背景を伝える紙芝居を自作して地域の農業イベントや学校で上演したり、“小麦栽培から始めるパンづくり”をテーマにした「三丘(みつお)パン研究会」といった活動に取り組んでいます。みんなが理解して、同じ方向に向いて進むことで、地域全体がよい方向に回転していくんだと思います。「“山口で採れた和麦”のパンを食べているんだ」地域の誰もがそう実感しながら山口和麦を味わう未来を目指しています』

取材協力:山口県製粉協議会 事務局長 松崎博明さん

山口和麦の基本情報

和麦名 せときらら
成 分 タンパク:10.0 ± 1.0%
灰 分 :0.48 ± 0.05%
粉分類 強力粉
特徴・向く料理 パンや中華麺に最適な強力粉です

山口和麦cookingレポート

山口和麦 meets 袋でコネコネ手作りピザ

袋でコネコネ手作りピザ

山口和麦アンバサダー
柳井 さつき先生

料理レッスンの活動のほかにも、日本野菜ソムリエ協会が認定する「野菜ソムリエ」資格のうち最高峰ランクである資格「野菜ソムリエ上級プロ」ならではの知識を活かし、地元野菜とこだわり食材を使ったメニューを提供する「さつきカフェ」をオープンしている柳井先生。山口県産和麦「せときらら」も普段から使い慣れており、そのよさを知る柳井先生が選んだレッスンメニューは、強力粉の王道メニュー「ピザ」とふわふわしっとりの「シフォンケーキ」。地元の公共施設で開催される出張料理教室にお邪魔しました。

Points of 山口和麦レッスン

『最近はこの和麦を使ったパンを出している県内のパン屋さんも増えてきているので「せときらら」という名前を耳にしたことがある方もいらっしゃるのかなと思います。今日はお子さまでも簡単に作れるレシピの「袋でコネコネ手作りピザ」と、地元特産の甘露醤油でコクのある味わいになる「せときららの甘露醤油シフォンケーキ」を作ります。まずはシフォンケーキから作りましょう。』

『ケーキの中でも特にふわっふわという特徴のあるシフォンケーキですが、通常は薄力粉でつくることが多いかと思います。今日は強力粉の「せときらら」を入れることで「どんな味わいになるのかな?」というところを実感してくださいね。』レシピは先生のカフェで出しているものと同じで、デモンストレーション式で進行していきます。
『卵の泡立てから始めますが、室温に戻した卵だと泡立ちやすい反面その泡がつぶれやすいので、シフォンケーキは冷たい状態の卵を使います。強力粉は薄力粉ほどダマができないんですね。なので最悪ふるわなくても結構大丈夫だったりするんですけど、空気を入れ込むという意味もあって1度ふるってもらうとよりきれいに出来上がりますよ。和麦を材料と混ぜ合わせる時は、さっくりと泡だて器を大きく回すようにしてなじませてください。焼き上げる時にオーブンをしっかり余熱をするのもポイントです。焼きあがったらすぐに取り出して型をひっくり返して冷まし、冷めたら型から外します』

続いてピザのレッスンは、生徒さんたち自身が生地に触れながら、チームごとにピザを仕上げていきます。『材料を入れて袋の上からこねていきます。袋の中がベタベタくっつかなくなってきたら生地を袋から取り出して、今度は台の上でこねてください。ちょっと辛抱のいるところですけれどがんばって10~15分ぐらいコネコネしてくださいね。男性の方が力があるので有利かもしれないですね!(笑)』参加者の男性も張り切って生地をこねています。

『生地が2倍に膨らむまで寝かせている間に、上にトッピングする具を準備しましょう。野菜は好きな形にカットしてください。クッキーの型抜きがあったら星形とかハート型にくりぬくと、お子さまはよろこびますよね。センス良くつくってくださいね。(笑)生地が膨らんだら伸ばしてソースを塗りますが、この時フチまで塗らない方が生地の焼き色がおいしそうに仕上がります。具材を彩りよく並べて、ピザ用チーズをたっぷり乗せましょう』

山口和麦、いただきます!

『わ~~~、いい匂いがしてきた!』ピザの焼きあがる香ばしい匂いに反応する生徒のみなさんに『冷めないうちにお皿に盛りつけて試食しましょう!』と呼びかける先生。お待ちかねの試食タイムです♪
『ピザの生地がもっちりしていておいしい~』『ピザの生地と同じ和麦を使っているのに、シフォンケーキの方はふわふわしっとりの食感なのね!』実際に味わい、さまざまな山口和麦トークが飛び交います。
『「せときらら」は外国産コムギと比べてちょっとグルテンが弱い部分もありますが、ご家庭で使う分にはそんなに気にならない程度です。香りがよくてとってもいい和麦なんですけど、まだ生産量が少なく現状では一般の家庭向けには販売されていないんです。生産量と消費量が増えていけば一般家庭用にも販売できるようになるかもしれないので、今日はみなさんに「せときらら」のおいしさを知ってもらって、パン屋さんやケーキ屋さんで見かけたら積極的に食べてみてくださいね!』

レッスン参加者の声

  • ピザは弾力があって、しっかり食べごたえがありました!

  • 小麦の種類も沢山あるんだなと思いました。

  • ピザ作りに苦戦しましたが、「せときらら」の味はとても好きです。

  • 想像していたより、扱いやすい小麦粉だなと思いました。

  • 自分でふだん薄力粉で作っているシフォンケーキよりもはるかにふんわりして、おいしいシフォンケーキでした。香りもよくおいしかったです。

山口和麦を使ったレシピ

袋でコネコネ☆手作りピザ

◦ せときらら・150g
◦ 塩・・・ひとつまみ
◦ 砂糖・・小さじ1
◦ ドライイースト・2g
◦ 水・・・70g
 (40℃位のぬるま湯)
◦ オリーブ油・13g
◦ ビニール袋
◦ トマトソース・適量
◦ 野菜いろいろ・適量
◦ ピザ用チーズ・適量

調理時間70時間/1枚分

  • 1

    ビニール袋に、強力粉、塩、砂糖、ドライイースト、水を入れて袋の上からこねる。この時、袋の口は縛らない。

  • 2

    粉っぽさがなくなったらオリーブ油を加えさらにこねる。袋にベタベタくっつかなくなってきたら、生地を袋から出して、台の上で10~15分こねる。

  • 3

    生地を元のビニール袋に戻して空気を入れて口を縛り、温かい場所で30分休ませる。(約2倍の大きさに膨らむ)

  • 4

    この間に、お好みの野菜を準備する。

  • 5

    オーブンペーパーを敷いた天板の上に③の生地を取り出し、円形にのばす。トマトソースを塗り④の野菜をバランスよく並べ、ピザ用チーズをたっぷり乗せる。

  • 6

    230℃に予熱したオーブンで10~15分焼く。食べやすく切り分ける。