和麦ストーリー 
山梨和麦「かいほのか」篇

山梨といえば伝統郷土コムギ料理の「ほうとう」が全国でも知られているかと思います。大鍋で大家族分のほうとうをしっかり煮込んで、アツアツの鍋をみんなでワイワイ囲み、時間をかけてゆっくり食べる。そんな光景が山梨の家庭で古くから受け継がれてきた食文化だそう。ほかにも「吉田うどん」などが伝わるように、山梨は元々うどん県でもあり、これまでにつくられてきた和麦品種も「きぬのなみ」など、うどん用の中力品種でした。そんな山梨県で2012年から初めて強力コムギの栽培が開始されたとのこと。山梨和麦の流通販売を担う製粉会社「株式会社はくばく」のお2人に、昨今の山梨和麦事情をお聞きします。

『最近のパンブームの影響もあってか、山梨県内でも思いを込めておいしいパンづくりに取り組むベーカリーが増えています。都内近郊からも山梨へパンをお買い求めに来るパン好きも多いとか。また、全国的に和麦が注目される動きができている中、こだわりを持ってパンづくりに取り組むベーカリー、そして学校給食の現場からも、地元・山梨県産の強力粉を望む声が高まってきています。

そうした現場の働きかけが山梨県を動かし、県産として初めての強力品種「ゆめかおり」の栽培が2012年より開始されることになりました。』2013年に発売開始以来、県内リテールベーカリーや学校給食からの呼び声が高く、またたく間に売り切れてしまうほどの人気となります。

麦穂が色づき始めている畑

『山梨県産の和麦でこんなにいい粉ができたんだよ、ということをもっと広く知ってほしい。そのような思いがあり、2017年に山梨和麦としての愛称をつけようと、県内の情報発信を担うYBSラジオの番組でネーミングを募集しました。360点の応募の中から「山梨県パン協同組合」と共同で審査をして決まった名前、それが「かいほのか」です。山梨にちなむ「甲斐」、上品に香る「ほのか」「穂の香り」という意味合いが込められています。』

このネーミングキャンペーンの他にも、山梨の豊かな食材をサンドイッチに仕上げるメニュー募集企画【美味しい山梨をはさんじゃおう】キャンペーンを2017年に展開。続く翌年2018年も同企画の第2弾として親子パン教室などを開催した「LoveパンFesta」など、山梨和麦を通じた県内卸などのネットワークも巻き込みながら、山梨和麦シーンを盛り上げるさまざまな取り組みを展開しています。

『「かいほのか」はまだ生産が始まったばかりで、需要に対する供給量が追いついていません。そこで、生産農家さんへ対するアプローチも始めています。和麦畑を見たことのないパン職人を連れて行って、生産農家さんとコミュニケーションを取ってもらう。生産農家さんたちに、自分たちがつくった和麦のパンを実際に味わっていただく。そうした働きかけを通じて、「自分たちがつくっている和麦はこんなによろこばれているんだ!もっと生産量を増やしていこう」という農家さんの声も聴くことができました。山梨和麦シーンでは今後も、生産者から製造者まで和麦ネットワークでつながるみなさんが一丸となり、最高の小麦粉の創出をめざして、栽培講習会や追肥指導、栽培地視察を重ねて、山梨和麦の品質の向上に取り組んでいきます。』

◎株式会社はくばくホームページ
http://www.hakubaku.co.jp/

山梨和麦の基本情報

和麦名 かいほのか
成 分 タンパク:10.5%
灰 分 :0.45%
粉分類 強力粉
特徴・向く料理 パンや中華麺に最適な強力粉です

山梨和麦cookingレポート

キャロットパン

コッペパン

山梨和麦アンバサダー
金子 美佐子先生

山梨県で発売された初めてのパン用和麦「かいほのか」のレッスンメニューは、見た目にもかわいらしく、お子さまたちにもよろこばれそうな「キャロットパン」。今回は地元のお野菜や、地元の素材で仕上げたクリームなどをサンドして、山梨の豊かな味わいをいただきます。地元のホテルやレストランに山梨の素材を味わっていただくメニュー監修を手掛ける金子先生ならではの、食材に対する豆知識が詰まったレッスンの開催です。

Points of 山梨和麦レッスン

『みなさん、山梨和麦「かいほのか」ってご存知ですか?ネーミング募集やサンドイッチのアイデア募集キャンペーンをラジオで聴いて、知っている方もいるかもしれませんね!県産では初めてパン用に栽培された強力コムギ品種「ゆめかおり」を挽いた小麦粉です。今日はこの山梨和麦「かいほのか」でつくる「キャロットパン」のレッスンです。見た目も人参の形に焼き上げます、楽しみにしていてくださいね♪』

パン生地づくりに入る前に、まずは人参の下ごしらえのレクチャーです。 『今日は山梨で採れた人参を使います。その土地の食材同士って、とても相性がいいですよね。人参は蒸し煮にして、やわらかくなったらフォークなどでつぶします。皮を剥かないでまるごと圧力鍋などで蒸してつぶすと、とても風味の濃いペーストができあがりますよ。つぶし方を少し粗目にしても、人参の風味が残りやすいですね。』食材の持つ本来の風味や味わいを活かしたパンづくり、料理づくりめざす金子先生。今回のパンづくりにも山梨の食材を大事に思う気持ちが込められています。

『いよいよ生地をこねてみましょう。生地のベースとなる水分は、キャロットペーストをメインに考えます。足りない分を補うイメージで水を入れていきますが、生地の様子を見ながら徐々に、という感じで。今日の湿度だと70㏄でちょうどいいぐらいかな。空気中の湿度によって、小麦粉の湿度も変わるんですよね。また、その日の気温によって水道水の温度も変わってくるから、パンづくりって環境が実は全部違うの。その人の体温と情熱によっても(笑)、生地のこね時間が変わってきます。何回かつくって、慣れてみて、自分のパンづくりを究めてみてくださいね。』生地づくりが終わったら、人参型に成形して焼き上げます。

『スリムで美人な人参になるように成形してくださいね(笑)発酵して2倍ぐらいに膨らんでくるので、できるだけ、細めに、細めに。』『先生、これぐらいですか??』『そうそう、この人参とても美人!成形で美人にできたら、焼き上がりも美人に仕上げましょう。練り込んであるキャロットペーストの色を活かすために、焼き色をつけないように低温でじっくり焼いていきますよ。その間に、今日は焼き上がったキャロットパンに挟むカスタードクリームも「かいほのか」でつくってみます。普通だったら薄力粉でつくりますが、グルテン量の多い「かいほのか」だと、とても早く固まるんです。ほら、あっという間にプルンプルンでしょ?今日はこのカスタードにさつま芋のマッシュを加えて、栄養たっぷりのポテトカスタードクリームとしていただきましょう♪』

山梨和麦、いただきます!

カスタードクリームのほかにも、クリームチーズ、サーモンやレタス、山梨のお野菜など、たっぷり挟んでみんなでいただきます。『このサンドイッチ、最高のおいしい!「かいほのか」でつくったクリームは、お友だちにもつくってあげたたい~』『ふっくらして、しっとりした美味しさ。好きになったわ』『人参の甘味がうまく効いていたフワフワね。これなら人参嫌いな子どももたべられそう!』『いろんな具材を用意して、ランチパーティーしたいな♪』地元の和麦でつくったパンに、地元の野菜をあわせていただくサンドイッチ。地元の味わいを堪能することで、改めて山梨愛が生まれたレッスンとなりました。

レッスン参加者の声

  • 「かいほのか」はやさしい味わいで、パンがふっくらとおいしかったです。焼き立ての香ばしい香りが大好きです。

  • 山梨の粉はほうとうに使う中力粉のイメージでしたが、こんなにふっくらおいしく焼けてびっくりしました!

  • 日本の食糧自給率は低いので、日本の農業のためにもこういう地元のものをもっと食べていきたいと思いました。

  • 北杜市の和麦と北杜市の人参の甘さがピッタリ合い、やさしい味でした。野菜との相性がよいと思うので、ほかの野菜パンも習いたいです。

  • フードマイレージの短い地元産の和麦は安心で、コスト面でも安価に買えるので助かります。子どもや孫にも食べさせたいと思います。

  • かわいらしい形のキャロットパンは、人参そのものをあまり食べない子どもたちも取り合いになるくらい人気でした。

山梨和麦を使ったレシピ

かいほのかで作るキャロットパン

◦ かいほのか・・250g
◦ 砂糖・・・・・10g
◦ 塩・・・・・・3g
◦ 生種・・・・・20g
◦ オリーブ油・・15g
◦ キャロットペースト70g
◦ 水・・・・・・70g

調理時間8時間/6個分

  • 1

    人参は1㎝厚さ程の輪切りにして、水をひたひたに加えて蒸し煮する。バーミックスなどですり潰して、ペースト状にする。

  • 2

    パン生地材料を全部ボールに入れてこねて1次発酵させる。(生地温28℃で6時間)

  • 3

    生地を8分割して、軽く丸めて休ませる。(約10分)

  • 4

    丸め直しをして、人参の形に成形して、天板に並べ2次発酵させる。

  • 5

    発酵が終了したら、横に軽く線を入れて、粉をまぶす。

  • 6

    160℃で10分焼成する。

レシピポイント

人参を柔らかくなるまで蒸し煮にする。人参の旨みを引き出すように、水の量を人参がぎりぎりかぶる位の少ない量にする。2次発酵を十分にとり、人参の色を残すように焼き温度に気を付ける。人参ペーストに、すりおろした人参を加えると風味や食感、色合いも変わり楽しめます。