製パンのお話:京都パン組合理事長 山本隆英さん
子どもたちに豊富な“食の体験”を。
学校給食パンを通じて、世界をひろげたい。
現在、京都の127校の小学校に給食用のパンをお届けしています。
地域地域で栄養士さんが決めた各学校の献立にあわせて、
いちばん多いときで1日に約20,000食ほど焼き上げる日もあります。
昔は生徒数が多かったので簡単に角切りできる「四角い食パン」が主流でしたが、
今は少子化が進んでいるため、パンの種類もバラエティ豊かなんですよ。
「規格パン」と呼ばれるいわゆる主食になる食パン、コッペパンや
「特別加工パン」と呼ばれる黒糖パン、ミルクパン、チーズパンまで、
さまざまなパンが生徒さんたちに食べられています。
京都というと、和食のイメージが強いと思われますが、
私たちは学校給食というのは大切な“食の体験の場”だと思っています。
世界で食べられているいろいろな国の料理や、
さまざまな食材にふれる“食の体験”を経験することによって、
子どもたちが大人に成長したときに「なにを食べようか」と
選べる判断位順を養う場として、学校給食が機能してほしい。
ですから、学校給食のメニューをご提案する勉強会では、
レパートリーに富んだ提案をしています。
また、年に数回ほどパン組合が主催となって
対象の学校を招いて親子パン教室を開催しています。
実際にパンが焼きあがる過程を目の前で見ると、
それを食べる子どもたちの目の輝きも変わってきますね。
子どもたちに“食の体験の場”をお届けする取り組みを、
これからも積極的に提案していきたいです。
製粉のお話:「井澤製粉株式会社」常務取締役 井澤文博さん
子どもたちの食の未来へ。
小麦の真ん中で、想いのバトンをつないでいく
京都の学校給食の歴史は約60年ほど続いておりますが、
平成14年度より地産地消の観点からの取り組みが始まりまして、
京都産小麦を使用した学校給食パンが食べられるようになりました。
当時の京都産小麦の配合比率は10%ですね。
それから平成22年度に20%に増量され、現在に至っています。
実は京都産の小麦は、品種的に「普通小麦」に分類されるもので、
グルテンも少ないため、それ単体でパンをつくるのは難しいとされているんです。
しかし、全農さんやパン組合さんとともに一丸となって、
学校給食のパンを通して和麦を拡大する動きに取り組んでいます。
京都では1年に1度、夏の時期に栄養士さんや教育委員会の
給食に携わる方々などが集まり、学校給食を考える
「学校給食パン講習会」が開かれるのですが、
そこで京都産小麦をもっと増やしていけないか、という提案の一部として
京都産小麦を51%以上、残りを北海道産小麦でつくる
100%国産小麦のパンの提案も進んでいる最中です。
農作物がパンに形を変えて食卓に並ぶまでには、
担い手がそれぞれの役割に想いを込めながら携わっています。
“畑から小麦”“小麦から小麦粉”“小麦粉からパン”へ。
製粉会社として、小麦でつながる現場の真ん中で
食のバトンを渡す役割を担えることを誇りに思っています。
そしてこのバトンを、京都の食を担う子どもたちの未来へ。
これからも和麦への思いをつなぐ取り組みを、大事にしていきたいです。
生産のお話:JA全農京都副本部長 山田保さん
食文化は味わうことで、受け継がれていく。
大地の恵みをもっと、京都の食の未来へ。
京都産の小麦は現在、「農林61号」と「ニシノカオリ」の2品種を作付しています。
10年前までは400トンの収穫量がありましたが生産者の高齢化や専業農家の減少により
現在では年間200トンほどの生産量しかなく、
これは決して多い収穫量とは言えません。
しかしその中で学校給食に関しては最優先に届けたいという気持ち、
少なくともその部分がお届けできなくなってはいけないという使命の心を、
生産側としては強く思っています。
次世代を担う子どもたちに少しでも京都産の小麦を食べてほしいという
地産地消の思いから、小麦が育つには難しい土壌と気候の京都でもすくすくと育つ
小麦の品種が開発されていないかなど、常に情報収集していますね。
子どもたちには、京都の味をしっかり知ってほしい。
いつか子どもたちが成長して料理をつくるようになりますよね。
そんなとき、つくるものは自分たちが食べてきたものだと思います。
幼いころから食べてきたものをもう1度食べたくなる、今度は自分でつくってみる。
そうやって脈々と受け継がれていくものが食文化だと思うんですよね。
食文化は、味わってこそ、わかるもの。
京都のおいしさをしっかりと知ることで、それが必要とされ、
生産力も高まる、そうして食が循環していく。
そういった意味でも、京都の未来を担う子どもたちが
京都の味わいを自信をもって語れるよう、
大地の恵みをこれからももっと、お届けし続けていきます。