和麦ストーリー 岩手和麦「ナンブコムギ全粒粉・ゆきはるか」篇

府金製粉株式会社
常務取締役 府金慶さん

『岩手県にはとても多くの郷土コムギ料理が伝えられています。春から夏にかけて太平洋側に吹く、冷たく湿った東寄りの風「山背(やませ)」の影響で、米ではなく小麦や雑穀がふるくから栽培されてきた土地なんですね。ですから、コムギ食や蕎麦食文化が根付いているんです。盛岡の三大麺と呼ばれる「盛岡冷麺」に「わんこそば」、「じゃじゃ麺」などは有名ですよね。郷土料理には「ひっつみ」「はっと」「とってなげ」など「すいとん」の変形料理も地域ごとに様々な名前で呼ばれて親しまれていますし、「かっけ」と言ってこの地方独特のコムギ鍋料理もあります。お菓子だと「南部せんべい」が有名でしょうか。』
府金製粉株式会社は岩手で60年にわたり、東北地域とのつながりを大事にしながら岩手和麦と向き合う製粉会社です。

『今回レッスンでお使いいただく2種類の和麦のうち「ナンブコムギ」は「南部せんべい」などにも使われてきた、昭和20年台からこの地域で親しまれてきた和麦です。古い品種ですので収量が少なかったり病気に弱かったりとの理由から、育成する品種を更新したいと言う農家さんもいらっしゃいますが、とても風味がいい和麦ということで根強く需要があります。岩手県は生産者である農家さん、育成された和麦を挽く私たち製粉会社、それから麺やパン、お菓子などに加工する使い手の方々まで、和麦にかかわる方々との連携が密にとれており、協力体制を築いている地域です。そうした中で、「この和麦を使いたい」など使い手の方々の声を、生産の現場までフィードバックできる土壌があるので、「ナンブコムギ」の育成についてもご理解いただき協力いただけています。

また、東北6県の育種にかかわる研究施設「東北農業研究センター」が岩手県に所在しており、東北6県の中でも比較的コミュニケーションが取りやすい状況です。そうした流れの中で新しく開発された「ゆきはるか」も、今回のレッスンでご提供させていただけることになりました。』「ゆきはるか」は国内でも珍しい、薄力品種の和麦とのこと。通常は小麦を挽いてタンパク値の低い部分を選別して薄力粉とすることが多いですが、「ゆきはるか」は成分値そのものが薄力寄りです。

『おばあちゃんから子どもたち世代へ、脈々と郷土コムギ料理が伝えられてきた岩手県でも、昨今では核家族化が進み始めています。「すいとん」もチルド商品がスーパーで売られていたりと、ご家庭で小麦粉から料理をつくる機会も減ってきているようです。しかし、実際に触ってみればコムギ料理はそんなに難しいものでもないことがわかるはず。ぜひ、触れることから初めてみてほしいですね。』

◎府金製粉株式会社ホームページ
http://www.rnac.ne.jp/~fugane/

岩手和麦の基本情報

和麦名 ナンブコムギ全粒粉、ゆきはるか
成 分 [ナンブコムギ全粒粉]
タンパク:11.0%
灰 分 :1.70%

[ゆきはるか]
タンパク:8.0%
灰 分 :0.40%
粉分類 [ナンブコムギ全粒粉]
中力~準強力粉

[ゆきはるか]
薄力粉
特徴・向く料理 [ナンブコムギ全粒粉]
・すいとん、うどん、菓子等に5~10%程度の量を混ぜて使用

[ゆきはるか]
・菓子等、その他料理全般

岩手和麦cookingレポート

春餅

春餅

岩手和麦アンバサダー
田代 由紀子先生

岩手和麦のレッスンメニューは、田代由紀子先生による中国の家庭料理「春餅(チュンピン)」です。「野菜ソムリエ」「アスリートフードマイスター」「食生活アドバイザー」など、さまざまな資格を持つ田代先生は、『楽しく、美味しく、健康な生活を!』をコンセプトにレッスンを展開しています。今回のレッスンでは小麦の表皮、胚芽、胚乳などを丸ごと挽いた栄養価の高い全粒粉の「ナンブコムギ」に、東北で開発されたばかりの薄力品種和麦「ゆきはるか」をブレンドして使用。ブレンドする量を変えた2種類の生地を用意し、食べくらべにも挑戦です!

Points of 岩手和麦レッスン

『今日の和麦はブレンドのものを使ってレッスンしていきます。「ゆきはるか」だけで生地をつくった方が口どけよく仕上がるのですが、今回は健康のことを考えて「ナンブコムギ」の全粒粉とあわせます。最近よく「糖質制限」などの話題がなにかと多いですよね。本来であれば無茶な糖質制限を行うよりも、バランスよく食べることがいちばん健康にはよいこと。それでも気になる方もいますよね。全粒粉は食物繊維が多く含まれているので、摂取した後の血糖値の上昇が比較的ゆるやかになるんですね。さらに今回つくる「春餅」は、お好みの具材を巻いて食べることでさまざまな食材を食べられる料理。今日は鶏や野菜を巻いて食べましょう。』

『さて、今回は「ゆきはるか」と「ナンブコムギ」全粒粉の2種類をブレンドするわけですが、ブレンドの配分が異なる2種類の生地を焼いて食べくらべてみましょう。茶色味が濃い方が「ゆきはるか」と「ナンブコムギ」全粒粉の割合が1:1のもの、それよりも色が薄いこちらのボウルの生地が「ゆきはるか」2:「ナンブコムギ」全粒粉1の比率です。』みなさん、生地の入ったボウルにスタンバイ。焼く前にも生地の状態をチェックです。『見た目にも色が違うのね!』『香りの濃さも違う気がする。』

『中火~弱火ぐらいに熱したホットプレートで焼いていきます。フライパンでも焼けますが、何枚も焼くのは時間もかかって結構大変。なので、みんなで焼きながら食べると楽しいと思います。さて、生地に火が通ってきたら端の方が浮き上がってきますので、そうなったらひっくり返してもう片面も焼きます。』『あ、ほんとだ、ちょっとめくれてきた!』『もう少し全体が浮き上がってくるまでちょっと待ちましょうか。』と、ここでおもしろい発見をした生徒さんが。『薄力粉「ゆきはるか」の分量が多いブレンド生地の方が、後から焼き始めたのに焼きあがるのが早いみたい!』『そういえば、生地をかき混ぜたときのもったり感や、ホットプレートに生地を伸ばした時の軽さも違ったわねえ。』異なる種類の和麦をブレンドすることで、新たな味わいや楽しさが生まれる。和麦の魅力に、また新たな一面が見つかりました。

岩手和麦、いただきます!

『さあ、みなさん上手に焼けましたか?早速いただきましょう。今日は中華風に北京ダックのイメージで鶏の照り焼きとさまざまなお野菜を用意しています。』春餅を焼き上げる間に仕込んでいた鶏の照り焼きに色とりどりの野菜、そして田代先生自身が畑で育てた蕪も並びます。そして実食、いただきます♪
『ん~、もっちりとした食感。そして甘味を感じる!』『食べくらべてみると、風味が違うのがよくわかるわ~』『「ゆきはるか」の配合が多めの方が具材の味わいが引き立つ気がする』などなど、みなさんつくるだけでなく味わいにもさまざまな発見がある和麦体験となったようです。

レッスン参加者の声

  • 小麦に“香り”があることを実感しました。特に「ナンブコムギ」の甘い香りは驚きでした!

  • 手巻き寿司パーティーみたいで楽しかったです♪チーズやジャム、あんこなど、中華風だけでなくいろいろ試してみたくなりました。

  • 配合違いの食べくらべをしたので、食感の違い、香りの違い、よくわかりました。

  • 「ゆきはるか」のきめの細かさ・食感の軽さに、春餅以外にも“ふんわり”重視のお料理に使ってみたいと思いました。

岩手和麦を使ったレシピ

春餅

◦ 薄力粉(ゆきはるか)・・・125g
◦ 全粒粉(ナンブコムギ)・・・125g
◦ 水・・・・・・500cc
◦ 塩・・・・・適量

調理時間15分/10枚分

  • 1

    薄力粉・全粒粉を混ぜ、水を加えてよく混ぜ30分ほどおく。

  • 2

    160℃のホットプレート(フライパン中火)に薄く油をしき、1の生地を丸く流し表面が乾くまで焼いたら裏返し反対の面も焼く。

  • 3

    春餅に甜麺醤をぬり、好みの具材を乗せ巻いて食べる。

レシピポイント

・粉を水で溶くときに泡だて器を使うとダマになりにくく、なめらかになります。
・具材は照焼きチキン、叉焼、茹でたエビなどに千切りのきゅうり、
 白髪ねぎがおすすめです。