埼玉県産小麦、期待の星 「ハナマンテン」の現場から

地産地消にかける思い。
埼玉で育つ、初めての超強力小麦

埼玉県産小麦、期待の星 「ハナマンテン」の現場から
「ハナマンテン」は、これまで中力小麦が中心だった埼玉県で栽培が始まった超強力小麦!
超強力小麦とはグルテン質が弱い小麦粉とブレンドし、中力粉をパン用粉として利用できる様に助ける特性を持った小麦です。
パンや麺に仕上げると、なめらかで小麦の風味があり、食感はモチモチ。
グルテンが少ないとされてきたこれまでの日本の小麦の弱点を克服すべく、遺伝子レベルの研究と長年の品種改良の末に生まれました。
栽培者の原農場では農薬や化学肥料を極力使わず、鶏糞堆肥を用いた安心・安全な栽培も特徴のひとつ。地産地消の思いが詰まった埼玉の超強力小麦。
「ハナマンテン」の現場をお伝えします。
農林水産省「総合食料自給率」平成25年度

製粉のお話:「前田食品」代表取締役 入江三臣さん

埼玉県の製粉会社としての使命!
どうしても、埼玉県産の強力小麦が挽きたかった。

埼玉県では古くから米と小麦の二毛作が行われてきました。 「朝まんじゅうに昼うどん」という言葉があるほど、埼玉は粉食文化の盛んな土地で、
小麦生産量は国内第6位(平成25年産)と上位県に位置しています。
そんな埼玉県において育てられていた小麦は中力系のものがほとんどで、
今までに強力系の有力品種の小麦はありませんでした。
お客様の要望もあり、どうしても県産の強力小麦が欲しかったのです。
パン屋さんや麺屋さんから上がっていたそのような声を20年位前から県や全農に伝え
強力小麦の栽培をお願いしていました。
そして平成18年頃「こんな品種がありますよ」と提案されたのが
「ハナマンテン」だったのです。
たんぱくが13~14%もある超強力小麦と聞き、期待を膨らませました。
しかし、新品種なので種麦の採取から始まり、県の認定品種をとる事など、
県をはじめ関係各位の協力を得て前田食品で全量引き取るという条件で導入に踏み切りました。
『身土不二』という言葉があります。これは、人と土地とは切り離せない関係にあって、
その土地で採れたものを食べるのが健康によい、という地産地消推進のための考え方です。
今後ますます、地元のパン屋さんを始め製麺屋さんや飲食店、
地元の大学などとも提携して、今までの固定概念を越えるような
「ハナマンテン」料理を展開していきたいと思っています。

前田食品株式会社
http://www.maedashokuhin.com/

栽培のお話:「原農場」原秀夫・伸一さん

小さくて軟弱。だけど、
肥料が少なくてもすくすく育つ“省エネ品種”。

親子2人、9年間「ハナマンテン」の栽培に取り組み続けてきました。
今まで育てた事がある小麦の中で
「ハナマンテン」は少し難しい品種でしたね。
丈が短く、やわらかくて倒れやすい。
最初はどうしたものかと悩みましたが、穂の量を調整することで改善を図りました。
赤カビ病に弱いという欠点もあるので、細やかなケアも必要です。
しかし、悪いことばかりでもなく、おもしろいこともわかりました。
ハナマンテンは小さくて軟弱だけど、通常の小麦と同量の肥料をやっていたら、
バタバタ倒れちゃう。肥料が少なくても育つ省エネ品種なんですね(笑)
ふつう3年ほどで特性をつかめるところ、ハナマンテンの場合は
6~7年かかり、慣れてきました。
ただ、慣れてきたとはいっても今でも試行錯誤の毎日です。
強力小麦が必要とする、たんぱく含有量を保つことは最重要課題です。
小麦栽培において、たんぱく含有量は施肥のタイミングと土の水分で変わって来ます。
今年みたいに大雨が何回もあると根っこがやられてしまい、
肥料を吸うどころじゃなくなって、たんぱく含有量は落ちてしまう。
施肥のタイミングを見極めるだけでなく、地中に穴を掘って水を抜き
いかに水はけのよい畑をつくるかといった地盤づくりなどの取り組みをしてきました。
精一杯小麦づくりをしていても、その年の天候によって品質のばらつきは出てしまいますが、
ハナマンテンのクォリティを保つために日々工夫しながら努力を怠らない。
それが、私たち農家としての使命です。

パンのお話:「和むぎやろくじゅう」片野雄介シェフ

国産小麦粉で
安心安全なパンを食卓へ

「和むぎやろくじゅう」は国産小麦粉にこだわり、
天然酵母で焼き上げている食パン専門店です。
使用している国産小麦は北海道産「春よ恋」「キタノカオリ」「ゆめちから」
「きたほなみ」、それと埼玉県産の「ハナマンテン」ですね。
「ハナマンテン」の食パンは「全粒粉ブレッド」で、
特に小麦の香りを楽しんでいただけるよう焼き上げています。
「ハナマンテン」はフランスパンやカンパーニュなどハード系のパンにも向いています。
ですが、住宅街の中にあるこのお店の立地を考えると、 ご高齢の方から小さなお子さままで毎日食べていただけるよう食パンにして提供しています。
ミキシングを工夫したり、長時間寝かせるなど、 「ハナマンテン食パン」ならではの食感や風味、味わいを
最大限に引き出すための手法を研究してきました。
「和わむぎやろくじゅう」で提供している食事や飲みものの食材もできるだけ安心安全な埼玉県産のものを使用しています。
「その土地でできたものを、その土地の人が食べる」そんな昔ながらの在り方を大事にする、地域に根づいたパン屋でありたいです。

「和むぎやろくじゅう」Facebookページ
https://www.facebook.com/wamugiya

パンのお話:「Le Soleil」杉山隆シェフ

ほかの小麦にはない口どけのよさ。
おいしいから、ハナマンテンを使っています。

ぼくがなぜ「ハナマンテン」を使うかと言うと、口どけがよい粉だから。
やっぱりそこに尽きると思いますね。 コッペパンに使う小麦粉を「ハナマンテン」に変えたのですが、 水分量が多く、やわらかく焼きあがる。お客さんにも大人気の商品となりました。
「ハナマンテン」は、扱うのに少しコツがいる粉です。
グルテンの質はよいが、たんぱく値が高いわけではない。
ストレートに水を入れてしまうと、生地がまとまりません。
普通より水を少な目に入れ、硬く生地を仕上げながらも 徐々に水を加えて多加水に仕上げていくといった、技術がいり、手間のかかる仕込みが必要な粉なのです。
それでもぼくが「ハナマンテン」を使うのは、 冒頭でお話しした口どけのよさといったおいしさがある粉だから。
いつか、すべてハナマンテンの小麦粉でパンを焼いた 「ハナマンテン・フェア」を開催してみたいですね。

「Le Soleil」
http://www.pan-lesoleil.info/iwatsuki/top.html
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