小麦生産量第2位の福岡パン事情「かわさきパン博」の現場から

パンを通じて、和麦を通じて、つながれ!地域の食と野菜。

福岡県は国内産小麦生産量第2位の土地。
そして、東京や海外で修業したシェフが福岡に舞い戻り
お店を構えるリテールベーカリーが何軒もあるほど、
パン通の都市でもあるようです。
今回はそんなパンシーンの盛り上げに一役買った
九州のパンイベントの先駆け「パン博」を通して、
福岡の和麦事情に迫りました。

パン博のお話:かわさきパン博・主催者(川崎町観光協会)山本剛司さん

パンは人を動かすチカラ。
おいしい時間を、かわさきで。

第1回目の「かわさきパン博」開催をした時は、 予想以上の反響の大きさに本当にびっくりしました。
初開催でいきなり5,000人ものお客さんが集まってくれたんです。
早いパン屋さんでは、40~50分ぐらいで売り切れに。
パン好きの方々の情熱を改めて思い知りましたね。
実は「かわさきパン博」の原点は、ここ川崎町のことを知ってほしい、 川崎町の食材を食べてほしい、というところから始まりました。
川崎町は元々は炭鉱の町だったのですが、 石炭が生み出す土地ならではの土壌が作物の成長を助け、 きれいな水と空気の中で味のよい野菜や果樹がよく育つ土地なんです。
パンを突き詰めて考えると、さまざまな食材と相性がいいですし日持ちもします。
小さい子どもからお年寄りまで、食事におやつに、みんなに愛される食べものです。 ということで「かわさきパン博」開催に至りました。
2回目は会場をもう1箇所増やし、出店いただくパン屋さんも倍増しました。
京都など遠方のパン屋さんからの出店もあったせいか、雨にも関わらず 会場である体育館を取り囲む行列の長さはまたすごいことに。
福岡からバスツアーもやってきたりして、常時入場制限をかけている状態でしたね。
この2回目にご来場いただいたJRの方からお声がかかり、 3回目は博多駅開業3周年にあわせたコラボレーション企画となりました。
その名も「パン博博(ぱくぱく)」を博多駅で開催し、 その2週間後に「かわさきパン博」を開催。
2日間での来場数は川崎町の人口約1万8千人より多い(!)、約2万人です。
「かわさきパン博」開催を機に、福岡市内の商業施設でも パン関連のイベントが開催されることが爆発的に増えたと思います。
「かわさきパン博」が福岡のパンシーンに革命を起こしたと言っても 過言ではないのではないでしょうか(笑)
それに伴いイベント日程が重なることで出店が難しくなるパン屋さんもいますが、 『心を込めて焼くパンだからこそ、地域のためになる「かわさきパン博」へなら』 と、変わらず出店していただいているパン屋さんの声も聞きます。
パンというと女性が好き、というイメージが強いかと思いますが、 小さなお子さんを連れたファミリー層や、ご高齢のおじいちゃん、おばあちゃん、 男性2人組もいたりと、客層はかなりバラエティ豊かなのも 商業的でなく地域に根づいたパンイベントである 「かわさきパン博」の特徴ではないでしょうか。
パンには、人を動かすチカラがあります。
地元からお越しいただくお客さまはもとより、 関西方面など遠方からお越しいただいたお客さまもいらっしゃいました。
回を追うごとに出展してくれるパン屋さんも増えています。
川崎町の住民の意識も変わりましたし、地元JRも協力してくれ、 JR日田彦山線では臨時列車も走らせてくれました。
パンを通して、本当にたくさんの人が川崎町と つながっていってくれたのではないかと思っています。
その絆をもっと、強くしていきたいですね。
そして「かわさきパン博」には福岡産小麦で焼きあげられたパンや 国産小麦を使用したパンも多く売られていますが、 ここ川崎町で採れた小麦を使って焼き上げられたパンはまだ並んでいません。
いつか、川崎町の小麦畑で採れた小麦粉と川崎の食材をあわせて 焼きあげられたパンが「かわさきパン博」に並ぶのが夢ですね。

「かわさきパン博」Facebookページ
https://www.facebook.com/KawasakiPanPaku

川崎町和麦のお話:小麦生産農家 西山一郎さん

はじまりの種を育む仕事。
福岡和麦物語は、川崎の大地から生まれる。

ここ川崎町で育てている小麦は「種麦(たねむぎ)」と言って、 通常の小麦栽培農家が蒔く、種にするための麦なんです。
品種は「チクゴイズミ」といって、うどんづくり向きの小麦。
九州農業試験場で開発された、九州を代表する小麦の品種ですね。
種麦の品質は「福岡県米麦品質改善協会」という機関で かなり厳しく管理されています。
大きさはその品種に際して適正か、異品種が混じっていないか、 病気にかかっていないか、などなど。
特に、異品種が混じっていないかということは、とても重要です。
小麦農家さんが畑に蒔いて育て上げた後、 違う品種の小麦が実ったことがわかったら大変なことになりますからね。
乾燥機や刈り取り機など、こまめに清掃して。
そんなふうに、30年間、コツコツと小麦を栽培しつづけてきました。
いま国産小麦は追い風が吹いていると思います。
福岡県はラーメン専用小麦「ラー麦」の栽培にも力を入れていますし、 「チクゴイズミ」に関しても、県の方から種麦ではなく 普通小麦の栽培をもう少し増やしてくれないか、 との打診をいただいたこともありますね。
炭鉱が終わりの時代を迎えていま、川崎町も農業に力を入れています。
種麦という栽培農家の性質上、他の品種を同時に取り扱うのは うちでは難しいですが、「かわさきパン博」が盛況な川崎町だからこそ、 パン用小麦を育てる取り組みは必要だという思いはありますね。
「かわさきパン博」を見ても、やはりパンというのは すでに流行りを通り越して定着しているな、というのは感じていますね。
パンの威力って、ありますよね。本当に人が多く集まる。
川崎町ではパン用小麦の栽培はまだ実現してはいませんが、 この町のきれいな水と空気、土壌の中で育つすべての作物や この町に古くから伝わる農家手づくりの味噌や調味料が パンを通じてひとつの未来をつくっていけるような活動が 今後も続いていってほしいな、と、小麦の作り手としても思います。
多くの方に、おいしい時間を過ごしに川崎町に遊びに来てほしいですね。

九州和麦パンのお話:「はっぱねっこベーカリー」阿部輝之シェフ

九州に、福岡に、生まれ育った作り手として。
焼き上げるパンに、込める思いがあります。

「かわさきパン博」には第2回目から参加しています。
会場に行ってみて本当にびっくりしました。すごい集客でしたね。
持って行ったパンが1時間で売り切れてしまって。
第3回目の出店時には増やして持って行きましたが、それも完売しましたね。
菓子パンからハード系まで15種類ぐらい、計600個ぐらいでしょうか。
「かわさきパン博」をきっかけに、お店の方にまで駆けつけてくれるようになった お客さまもいらっしゃって、その広がりがうれしかったですね。
「はっぱねっこベーカリー」で焼き上げるパンは、オール国産小麦です。
特に、九州産小麦にこだわっていて、いま8割が九州産のものですね。
その中でもできるだけ福岡県産を使うようにしています。
メインで使っている小麦の品種は「ミナミノカオリ」といって、 九州産パン用小麦を育成するために九州で品種開発された小麦。
「カオリ」を名前に冠する通り、香りよいのが特徴です。
福岡って、生産量第2位の土地なんですよね。 地元に生まれ育った者として、九州産、特に福岡県産の小麦が望ましい。
できるだけ近いところの原料を使いたいと思って、使い始めました。
やはり地域を大事にしたい思い、そして、安心感があります。
製粉会社の方にお願いして小麦畑へ連れて行ってもらったりもしました。
大地から伸びる麦の穂を見ると、感動しますね。
パンイベントの中でも多くのパン好きが訪れる「かわさきパン博」には 福岡ならではの小麦の味わいを存分にお楽しみいただきたくて、 香りや独特のモッチリ感を存分に感じていただける シンプルなパンも多数ご用意しました。
今はまだ主原料である小麦に関して、 九州産・福岡産をメインに使っている段階ですが、 野菜や食材に関しても地のもの同志の相性はいいはずですし、 研究していきたいですね。
つくっていきたいのは地域性のあるパンです。
筑紫野・大宰府地域にまつわる歴史をひもといて、 その物語にちなんだストーリー性のあるパンをつくりたい。
地元を愛する気持ちをパンに込めて、お届けしていきたいです。

「はっぱねっこベーカリー」ホームページ
http://www.happa-nekko.com/

第4回かわさきパン博

町民人口を超える集客力を誇るパンフェス!
おいしい時間を、かわさきで。

「かわさきパン博」は、『川崎町のことを知ってほしい、川崎町の食材を食べてほしい』 という思いから生まれた、九州のパンフェスの先駆けとなったイベントです。
4年目となる今回は、県内外から集まった人気のパン屋さん61店舗が出店。
こだわりのあるパン屋さんが手掛ける個性豊かなパンがずらりと並びました。
さらに、今回ほぼ全てのパン屋さんが、はちみつや野菜、柑橘ピールなど
の川崎町が誇る食材や、福岡県産の小麦、食材などを使った
限定パンを販売。会場に入るのに大行列ができるほどの
入場制限がかかり、開催1時間ほどで完売となるお店も 続出しました。

今年はこのにぎわいを町全体に拡げようと、川崎町内を巡るスタンプラリーの開催や、 周遊バスの運行、さらに川崎町内の飲食店で使えるお得なクーポンの配布など、 初めての取り組みも実施されました。
親子連れからお友達同士、カップル、シニア夫婦など、 さまざまな人が集う会場は熱気があふれ、 2日間の開催で約2万人来場の昨年を上回る 過去最高の約2万三千人の集客を1日の開催で記録。
パンはたくさんの人々と地域、食材をつなげ、 笑顔を生み出す力があることを実感させてくれました。
<スペシャルイベント>
●スペシャルトーク「ドンク仁瓶利夫と考えるBon Painへの道」
日本で初めて粉からこだわった本場のフランスパンを製造販売した 老舗ベーカリー「ドンク」の技術顧問であり、 業界のカリスマ職人である仁瓶利夫(にへい・としお)さんが パン文化発祥の地・神戸より駆つけ、トークショーを展開。
同氏が前日から仕込み、パン博当日の朝に焼いた 「仁瓶さんが作る究極のフランスパン」試食付き。
日本におけるフランスパンの歴史をひもときながら 「正しいフランスパンを広めたい」思いを語った。




<同時開催その他>

●パン博スタンプラリー
町内の飲食店や観光名所を巡りスタンプを集めると
川崎町の製造会社「沖本縫製」こだわりの
オリジナルパンバッグがプレゼントされるスタンプラリー。
●ワークショップ
パン博会場内にて「バターナイフ作り」「ミニパンモビール作り」「焼印を推してみよう!」などなど多数のワークショップを開催。また、川崎町の人気果樹園レストラン「ラピュタファーム」にて同レストランのパン職人によるパン博当日限定の「パン教室」開催。
●飲食店クーポン
川崎町内の飲食店と連携し、パン博開催を皮切りとした8日間、割引やドリンクサービスなどのお得な特典が受けられるクーポンイベントを開催。


●竹とり物語
町内にある国指定名勝庭園「藤江氏魚楽園」で川崎町の食と技の自慢フェア「竹とり物語」を開催。竹笛や食器作りのワークショップ、地元のレストランや農家のお母さんたちによる季節料理や田舎弁当販売など。
●ひたひこパン博臨時列車
コクらと日田を結ぶJR日田彦山線が、田川後藤寺~添田間で臨時列車を走行。また、川崎町を巡る「おいしい時間を川崎で!かわさきパン博ウォーキング」が開催された。
  • 鳥取「大山こむぎプロジェクト」の現場から
  • 東京「日本全国ご当地パン祭り」の現場から
  • 埼玉「ハナマンテン」の現場から
  • 北海道江別の現場から
  • 神奈川「湘南小麦」の現場から
  • 京都「学校給食パン」の現場から
  • 福岡「かわさきパン博」の現場から